『誰にも言うなよ?』
「風が気持ちいな」
「むしろサムい」
「振り落とされんなよ、モト公」
その呼ばれ方、いつぶりだっけ。
すごく懐かしく感じる。
「ねえ。さっきの人たちは?」
最初は他の黒いバイクに乗った人たちも一緒に数台で走っていたのに、徐々に別れて気づけばみんないなくなった。
「さぁ。仕事にでも戻ったんじゃねーかな」
「仕事!?」
「あいつら社会人だからな。商社マンやマスコミ……その他諸々」
若い頃にやんちゃしてても今はバリバリ働いてるのか。
「いきなり呼んで来てくれたの……?」
「そうだな。徴収かけて集まれるだけ」
「ちなみに、何人に声かけたの?」
「さぁ、俺は任せきりだからそのへんよくわかんねぇけど100人くらいはかけてそうだな」
「ひゃ、100人!?」
「急な話だったから俺一人になるの覚悟してたんだけど案外みんな暇してるのな。ははは」
ははは、じゃないよ。
急でも
仕事抜けてでも
こんな昼間から集まってくれた人がいたのは
暇だからじゃなくて、
先生の人望が厚いからでしょ。
「可愛い連中だよ。今度、飯でも奢るか」
「……あ」
「ん?」
「まさか、あの写真に写ってた人たち?」
狼谷のデスクにあった暴走族時代の。
「それしかないだろ。あんなイカツイ連中」