『誰にも言うなよ?』
それから、狼谷とやってきたのは――。
「……『狼谷探偵事務所』?」
雑居ビルにひっそりと看板を掲げた探偵事務所。
「なに、ここ」
「見ての通り。我が城だけど?」
城って……。ビルでしょ。
ここが、狼谷の職場?
「アンタ探偵だったの?」
「そうさ、ワトソンくん」
誰がワトソンだ誰が。
「……ほんとに?」
「意外だった?」
「向いてそうだなとは、思う」
あっさりわたしのなくしものを見つけてくれたり。
現場を写真に収めたり。
資料室から助け出してくれたり。
それかは、連れ去られた現場に駆けつけてくれたり――。
「依頼くるの?」
「そこそこ」
「……どんな?」
「小さいものから。まあ、大きなものまで」
大きなものが気になりすぎる。