『誰にも言うなよ?』
事務所の中はとても綺麗とは言えなかった。物が散乱している。
「助手っていうか。清掃員雇うほうがよくない?」
「なんでもできる助手を雇うつもりだから問題ない」
ワトソンはどこまでホームズの面倒みさせられるんだ?
ソファに投げ、腰をおろす狼谷。
長い足を組み、深々と座る。
「それなら……」
「なんだ?」
「なんでもない、」
“わたしが助手になってあげてもいいよ”
――なんて
絶対に、言ってあげない。
「ああ。そうだ」
「なによ」
ニッとわたしを見あげると
鋭い目を細め、こう言った。
「木乃。ここでバイトするか?」