『誰にも言うなよ?』
「ふぅん」
「すぐに終わるので。どうぞ、先生は、お気になさらずに」
さっさと片付けよう。
なんだか最低な気分だったのに、この男が来たせいでそれどころじゃない……。
――カチッ
(いまの……なんの音だ?)
顔を上げると、あろうことか
狼谷先生がタバコに火を付けていた。
「なっ……なにを考えているんですか。こんなところで吸わないで下さい」
バカなの!?
火災報知器が作動したらどうするんだ。
「そりゃ失礼」
そういいながら、ふう、と息を吐く。
いやいや。消せよ。
失礼とか思うならさぁ。
なに呑気にふかしてんだよ。
トイレでタバコとか不良か。
そして躊躇なく女子トイレに長居するな。
今、誰か入ってきたら
先生ほんとにヤバイ人だからね!?
「……なあ、それ」
近づいてくると、ゴミ箱に手を突っ込む狼谷先生。
「ちょ、やめて下さいよ。汚いじゃないですか……ゴホッ」
(けむいわ……!!!)
「ああ、すまん」わたしが蒸せたのを見て、くわえているタバコをポケットから取り出した携帯灰皿へと押し込んだ。
やっと消しやがったな。
「……なるほど」