『誰にも言うなよ?』
「探偵?……狼谷が?」
ギブスをはめた雅人の口にお箸でつかんだ玉子焼きを突っ込みながら「そうそう。そこの助手で雇われた」と答えた。
「モトコー。ボクにもしてよ『あーん』って」
「これは雅人が利き手使えないからだよ」
「じゃあボクも利き手使えなくなったらしてもらえるんだね……。身の回りの世話から下の世話まで」
『うん』って言ったら利き手潰してきそうだな?
「そのときはわたしでなく介護サービス頼んで。レオならいくらでもVIPなサービス受けられるでしょ」
「ちぇ。モトコってボクより青山くんに優しいよね」
別にそんな差別みたいなことしてるつもりないけど……。
「雅人はレオみたいに下心ないしね」
「あるよ?」
(……!?)
「ま、雅人?」
「素子から食べさせてもらえるなら、ギブスも悪くないかなってちょっと思ってる」
「は……」
雅人かそんなことを言うのはすごく珍しい。
「あのボロビルにある事務所でしょー」