『誰にも言うなよ?』
彼女、いたんだ。
まあいるよね。
大人だし。カッコイイ……し。
「……俺にとっとけなんて。ズルい」
自分は好きなだけ女の人と遊んで
わたしをキープするって何様なの。
「え、『俺にとっとけ』って言われたの? なにを?」
わたしのつぶやきをレオは聞き逃さなかった。
「っ、なんでもない!」
「カミヤもすみに置けないねぇ〜。とっておけと言われるとますます奪いたくなるなぁ。今すぐにでも」
「またすぐそういうこと言うっ……」
と、そこに――。
「青山くん……!」
(千夏……?)
やってきたのは、同じクラスの倉田千夏だ。
この学校で珍しい優等生のひとり。
「腕、大丈夫?」
「あー、うん」
「折れてたって聞いたから。私にできること、あればなって思って」
なんで千夏が雅人にそんなこと言うの?
「あれぇ。もしかして青山くんが助けたのって」
(助けた?……なんの話?)
「あ、モトコきいてない?」
「……うん」