『誰にも言うなよ?』
教室に、笑いが湧いた。
さっきまでの嘲笑や罵倒ではなく
楽しい雰囲気に包まれる。
「ってなわけでさぁ。いっちょ頑張ってみない?」
レオの言葉に
「がんばる!!」と一番に返事したのは、早川優那。
「友情出演で青山くん呼ぼうかなぁ」
「え!? 王子2人ってことー!?」
おい、勝手に決めるなレオ。
あとで雅人に叱られても知らないよ……?
「お前が姫やっても似合うんじゃねぇか」とレオに向かって冗談半分でからかう男子。
するとレオが、
「あはっ。女装してキミのこと満足させてあげようか。自信あるなぁ。だけどボク……高いよ?」と返した。
男子は、あんぐり口を開けている。
レオの方が一枚うわてだったようだ。
「レオくんの女装見たすぎる」
「あたしも」
全員説得できたわけじゃない。
それでも最悪の状況から最高のムードになった。
「あ、そうだ。演劇で優勝したクラスには賞金出るって聞いたことある」
「マジ!?」
「山分けしようよー、山分け」
また、レオに助けられた。
感謝してもしきれない。
「っ、」
倉田千夏が教室から出ていく。
レオに視線を送ると、ウインクされた。
まるで『あとはボクに任せて』と言われたみたい。
「……ほんと、ありがとう」
わたしは、教室を出て倉田千夏を追った。