『誰にも言うなよ?』
「なんでそんなこと知ってるの?」
「えっ、それは。……人づてに聞いた」
「ふーん」
咄嗟にさっき副会長と話したことを隠してしまった。別に隠す必要なんてないのに。
「そういえばボク、ここにくる途中、会長とすれ違ったよ」
「そうなの?」
「モトコは? 今日アイツに会った?」
「……会ってないよ」
今朝のことは思い出したくない。
はやく、忘れてしまいたい。
「そっか。なんか、ケガしてたんだよねぇ」
――!
「やっぱり女の子にやられたのかなぁ」
「さ、さぁ。どっかにぶつけただけかもよ」
「ぶつけるかなぁ? あんなとこ」
心拍数が、急上昇する。
「それか顔面にボール当たったとか」
「ふーん。なるほどね。ボールがねぇ」
「……そうだよ、きっと」
レオが、スマホをポケットにしまい込み
わたしに近づいてくる。
「なんのハナシをしてるの?」
(は……?)
「会長の、怪我の話でしょ?」
「ケガって?」
いや、言い出しっぺはレオじゃん。
「だから唇の……」
「あれぇ。ボク、ひとことも“唇”なんていってないよ?」