『誰にも言うなよ?』


「どうせ今日もわたしは清掃員なんだろうなと思いまして」

「誰がそんなこと言った?」

「……は?」

「じきに出掛ける」

「出かけるん……ですか?」

「木乃がここに残って掃除してたいっていうなら留守番しててもいいが」

「っ、お供します!!」



 *



先生が身支度を整えたあと、やってきたのは――。


「なんで、ここなんです……?」


まさかの、遊園地だった。


ジャケットの下にTシャツというカジュアルな格好をしている先生の姿には違和感しかない。


「先回りだ。依頼主の旦那が、今日ここで愛人とデートするらしい」

「は?」


(それって……不倫!?)


「こんな場所、男ひとりだとなかなかウロつけないからな」


ってことは……


先生とわたしは、今は


恋人の設定……?


「俺のことは“お兄ちゃん”って呼べ」

「は!?」

「より自然だろ。兄妹で遊園地」

「…………」

「不服か?」

「別に、」

「あ。あいつだ」

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