『誰にも言うなよ?』


って、なにムキになってるんだろう。


この話……もうやめたい。


「木乃」

「……?」

「怖かったろ」

「……先生?」

「つくづく自分が無力だなと思うよ」


今の今まで。


笑っていて。


余裕いっぱいだったクセに。


「俺にしてやれることなんて限られてるからな」


どうして急に

そんなに辛そうな顔をするんですか。


「……同情、してますか?」

「いいや?」

「だったら、なんでそんなこと言うの」


わたしの胸をざわつかせるの。


「どうしてかって? そんなの――」


――!?


ドサッと、ソファに、押し倒される。


身体には指一本触れられていない。


だけど、

息がかかりそうなくらい先生が近い。


「こういうことだ」

「どういうこと、ですか」

「言わなきゃわかんねーの?」

「……ハイ」

「たとえお前を優しく抱きしめてやりたいと願っても」

「…………」

「佐々木とのキスよりずっといいキスしてやりたくても」

「っ、」

「そんなことはできない」

「……なんで?」

「マズイだろ」

「わたしが、言っても?」

「は?」

「わたしがいいって言っても……ダメなんですか?」

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