『誰にも言うなよ?』
「いただきます」
おばあちゃんのお味噌汁ってなんでこんなに美味しいのかな。無理しないでと思っても食べられるのはやっぱり嬉しい。
しかしまぁ。今日は、散々な一日だった。
エリカのグループに目を付けてあんな嫌がらせをされるし。
学年一のモテ男には借りを作ってしまったし。
そしてなにより、
あの狼谷先生が元暴走族なんて……。
「なにかいいことでもあったかい?」
「は……?」
「ボーイフレンドかい?」
なんでそうなるの。
「素子ちゃんはめんこいからねぇ」
なにを言いだすの。
孫は眼に入れても可愛いとかいうけれども……。
わたしのこと可愛いっていってくれるのおじいちゃんとおばあちゃんだけだよ。
【そうやって自然にしてる方が可愛いよ、木乃】
……あっ、あれは。
あの男が適当に言いやがっただけで。
あんな言葉に深い意味なんてない。
……ないのに。
思い出してドキドキするのが、嫌だ。