『誰にも言うなよ?』
現れたのは、狼谷先生だった。
「え……? ヨガ?」
「足を高く上げてるので」
いやいやいや。
たしかに今わたしがしていた足の裏を覗き込むそのポーズは、はたから見たらヨガっぽいかもしれないけれども。
靴箱でいきなりヨガのポーズなんてとるわけないでしょうが。
昨日会ったアイツとは別人のように、いつものモッサリした地味な先生に戻っている。
「ケガしたんです」
わたしの返事を聞いた先生が、分厚いレンズの奥で目を見開いた。
「怪我……ですか?」
「いや、まあ、たいしたケガじゃないんですけど」
「来てください」
「は?」
「――いいから、来い」