『誰にも言うなよ?』
今すぐ黒板のラクガキを消してやりたいのに、身体が動かない。
足が。前に、進まない。
「そういや俺、見たわ」
近くに座る男子が会話に入ってくる。
「なにを?」と、愛美。
「昨日の放課後、狼谷と木乃一緒にいたよな」
「うっそぉ!?」
あれは、鞄の中身を探すのに先生が付き合ってくれていただけだ。
「なにそれ。ますます怪しい~」
愛美の顔がどんどん歪んでいく。
「二人でコソコソなにしてたの?」と、菜々。
わたしは……
わたしは、あんたたちが隠したモノを見つけていただけだ……!!!
「狼谷と素子がいちゃついてるとことか想像したくないんだけど〜」
「それはヤバい。キモすぎー」
勝手なこと言わないで。
「先生とわたしは、そんなんじゃ……ない」
先生はわたしを助けてくれた。
一人ぼっちのわたしに、手を差し伸べてくれた。
「えぇ? なに? 聞こえない~」
「言いたいことがあるならハッキリ言いなよ」