『誰にも言うなよ?』
「凄いなんてそんな……。誰でも作れる手抜き弁当だよ」
自分で言いながら、女子力のなさをアピールしてしまったことに気づく。
「だけどそれ作るために早起きしてるってことだろ? 考えらんねぇ」
「……朝、苦手なの?」
「ああ。つーか、このところ寝不足で」
「そっか……」
「ひと眠りしようかと思って来た。教室はうるせぇし」
「それじゃ、わたしはどこか別のところへ……」
「ここにいれば?」
そういって、青山くんがわたしに近づいてくると——お弁当箱からひょいと玉子焼きをつまみ食いした。
「先にいたの、あんたなんだし」
正論すぎて反論の余地がない。
が。
「なんだ。普通に美味いじゃん」
青山くんがっ……
「ごちそーさん」
わたしの焼いた卵焼きを
ぱくりと
食べた……!!!
「オヤスミ」
「お……おやすみ」
寝ちゃった。
コンビニ袋の中のモノに手をつけずに。
仰向けになって、すやすやと。
なんてマイペースな人なんだろう。
『普通に美味いじゃん』
勝手に、奪われてしまった。
不意打ちすぎるよ青山くん。
突然のことで心臓がバクバクだ。
そんなわたしの気など知りもせずに、王子様みたいな顔してすやすやと眠りについている。