『誰にも言うなよ?』


「わざわざ大荷物抱えてきてるのも、自衛かなにか?」


青山くんの言うとおりだ。

鞄も体操着袋も、屋上まで持ってきた。


全部いたずらされないためだ。

教室に置いてきてまた隠されたら困るから。


「……先生、大丈夫かな」

「え?」

「狼谷先生、わたしと変な噂でもたったら、校長先生とかに呼び出されるかもしれないよね」

「やましいことでもあんの?」

「まさか……!! あんなの全部デタラメだよ!!」

「なら、気にしなくていいんじゃないの」

「でも……」


もしもこのことが問題になって、先生が罰でも受けてしまったらどうしよう。


「……あんた、狼谷のこと好きなのか」


――はぁ!?


「まさか。あり得ないし。誰があんな……」


言いかけてハッとした。


危ない危ない。

青山くんの前で毒舌が出てしまうところだった。


「はは」


ぷはっと笑う、青山くん。


「え……? な、なんで笑うの?」

「そんな顔赤くして全否定したら逆効果だろ」

「なっ……ほんとに、わたし、先生のことは……」


そんなんじゃないのに。


「だったら俺の女になる?」


――え?


「そしたら狼谷との噂はどこか消えちまうかもよ」

「え……」

「俺があんたのこと彼女にしたら、あんたを晒し者にしようって考えるヤツも少しは減ると思うけど」

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