『誰にも言うなよ?』



「これからは、恋人らしく振る舞わないと不自然だし」


肩に手を回される。


「一発、練習しとこうか」


状況を呑み込めないでいると、青山くんの顔が——ぐっと近づいてきた。


「ちょ、待っ、え、こんなのは……やりすぎだよ!?」


ドン、と青山くんの胸を押す。


「冗談なのに。焦りすぎ」

「……!!!」

「女に拒絶されたの初めて」


そんなこと言われてもっ……。


「あんた可愛いな」

「バカにしないでよ……」

「してないよ」


そういうと、青山くんはやわらかく笑った。


「大人しい子かなって思ったけど、なんか一気にイメージ崩れた」

「え??」

「コロコロ表情変えて。案外口悪いし。かと思えば……純情で。忙しいヤツ」


……青山くんこそ。


クールと思ったら女の子に慣れていて。


チャラそうだと危機感を抱いた途端、そんなになつっこく笑う。


その、ギャップの嵐についていけません。


「ここにいましたか」


――!!


やってきたのは、狼谷先生。


そういえば先生の準備室ってこのすぐ近くだったっけ。


「木乃さん、ちょっといいですか?」

「わたし……?」

「ああ。お取り込み中、すみませんねぇ」


チラッと青山くんをみる先生。


「べ、別に……取り込み中とかじゃ、」
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