『誰にも言うなよ?』
*
「カップル誕生か」
国語準備室にやってきて二人きりになった瞬間、先生が茶化すようにいう。
「青春だねぇ」
違うし。ただのフリだし。
「まさかお前らがなぁ。もしかして、俺、キューピット?」
「……っ、なにか用ですか」
「担任の先生から聞いた。ラクガキのこと」
やっぱりそのことか。
「……先生、大丈夫でした?」
「俺か? 俺はなんの問題もねーよ」
「そう……ですか」
だったら良かった。
わたしのせいで先生がとばっちりを受けたら嫌だし。
「それよりお前ヘコんでるんじゃねぇかと思ったんだけど」
「は?」
「青山がいるなら心配なさそうだな」
——そう言われた瞬間、なぜだかわからないが無性に寂しくなった。
「わたしのこと、心配してくれてたの?」
「もちろん」
当たり前のように返事するのは
先生が先生で、わたしが生徒だから……だよね?