fantasista





それなのに、



「マジかぁー!

それなら山形の処女、無理矢理にでももらっておくべきだった!」





なんでそんなことを言うの?

馬鹿戸崎の戯言なのに、あたしの胸がすごくうるさい。

胸をぎゅっと掴んで俯くあたしの気持ちなんて、戸崎が分かるはずもなくて。





「オトコオンナの山形を手懐けられる男って、俺しかいねーんだぜ?」




あの頃と変わらない、チャラ口調で言う。





……そうだよ、あたしを手懐けられる男は、戸崎しかいなかった。

五年経った今も、こうやって戸崎に会ったらときめいた。

今までの冷え切った氷が溶けていくかのように。

まるで、魔法にかかったかのように。


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