fantasista
戸崎はふっと笑った。
見たことのないような寂しげな笑いだった。
その笑みを見ると、胸がつねられたように悲鳴を上げる。
そして戸崎は、落ち着いた声であたしに告げる。
「だってお前、ばっくれるだろ?」
その言葉に何も言えなくなる。
「俺が怪我したの自分の責任だとか、訳分かんねーこと考えてんだろ?」
なんで……なんで戸崎は分かってしまうの?
顔をくしゃくしゃにするあたしを見て、戸崎は笑う。
儚くて優しい笑みだった。
「絶対逃がさねぇよ。
お前がいなかった五年間、俺がどんな気持ちで過ごしたか……」
「戸崎……」