fantasista








戸崎とタクシーに乗った。





「俺の車はMT車だから、こんな足じゃ運転できねぇ」




奴はボヤいていた。




アスールのエースストライカーである戸崎のことだ、きっとすごい愛車に乗っているんだろう。

そして、家も豪邸なんだろう。

いや……確か戸崎の実家も豪邸だったな。

父親があの人だから。

なんてことばかり考えていて、やっぱりあたしとは釣り合わないと自己嫌悪に陥る。

そんなあたしの心を知っているかのように、そっとあたしの手を握る。

それだけで、身体がきゅんきゅん音を立てる。





「頼むから俺のそばにいてくれ」




戸崎のくせに、どうしてそんなに甘いことを言うの?




「もう、あんな思いしたくねぇんだ」




その言葉に、胸がずきんと痛んだ。


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