fantasista
「まー、俺のこと避けて、急に音信不通になった女だもんな」
戸崎はぼやきながら、ペーパーナプキンに何かを書いて……
おもむろにそれを差し出す。
「俺の携帯番号。
気が変わったら連絡くれ」
「……え?」
思わず顔を上げると、彼の綺麗な瞳と視線がぶつかる。
あの頃と同じ、まっすぐで力強くて、そして優しい瞳だった。
一瞬にして、胸の中の氷が蒸発した。
やっぱりいけない。
戸崎に近付いてはいけない。
モテ男戸崎のことだ。
この五年の間に、戸崎の気持ちは変わっているだろうから。
あたしはこうも戸崎に溺れているのに、戸崎はあたしなんてどうでもいいだろうから。
このままじゃあたし、一生男性を好きになれない。