fantasista







「山形」




急に名前を呼ばれ、びくりと飛び上がった。

泣きそうな顔で振り返ると、そこには久しぶりに会う人物が立っていた。

同じサッカー部だった、竹中君だ。

彼は泣きそうなあたしを見て驚いた顔をする。

そして、物陰からちらりと廊下を見て口を噤んだ。





「ぐっ……偶然見ちゃって。

あたし、相変わらず嫌な女だよね」



自虐的に言うあたしに、



「俺は山形がすごいと思うよ」



竹中君は静かに告げた。




「ちょっと場所移動しようか」




そして、竹中君はあたしを店の外に連れていった。



< 167 / 244 >

この作品をシェア

pagetop