fantasista
随分温かくなった風が、あたしたちの間を駆け抜けた。
居酒屋の中からは、まだまだ馬鹿騒ぎの声が聞こえてくる。
だけど、あたしたちの周りには、沈黙が舞い降りていた。
やがて、竹中君が口を開く。
「山形って、戸崎と付き合ってるんでしょ?」
その問いに、こくりと頷く。
頷きながらもちくりとする。
さっき見た光景が、目に焼き付いて離れない。
「俺はどうして山形みたいな真面目でいい女の子が、戸崎なんかと付き合っているのかが分からないんだ」
そんな竹中君に、
「……なんで?」
聞き返していた。
あたしも分からない。
どうして戸崎なんだろう。
どうして五年間も忘れられなかったんだろう。