fantasista
「でも、さっきは戸崎のこと、盗み見てたじゃん」
その言葉に何も言えなくなる。
「俺もさ、高校時代の彼女二人を戸崎に寝取られて、正直恨みしかないんだ」
そうなんだ。
竹中君も辛い思いをしたんだね。
そう言う以前に、戸崎のことしか考えられなくなる。
戸崎が人の彼女まで寝取っていたと聞いて、愕然とする。
戸崎はどういうつもりで人を抱いたんだろう。
あたしは、そんな軽い気持ちで身体を許すことなんて出来ない。
「もしさ、山形が俺みたいに戸崎のことを恨んでいるなら……
俺と寝ようよ」
「え……」
「一回戸崎を裏切ったら、戸崎の過去なんて忘れられるかもしれない」
竹中君は人のいい顔で笑った。
爽やかな笑いなのに、なぜか怖かった。