fantasista






戸崎はその晩、あたしをただ抱きしめてくれた。

離れないようにぎゅっと。





戸崎の体温に包まれて、あたしは思った。

戸崎に抱かれたい。

このまま抱かれてしまえば、どんなに気持ちが楽だろう。






「謝ってもどうにもならねぇって分かっている」




戸崎はあたしに静かに告げる。




「でも……謝らせて欲しい。

俺は山形をたくさん傷つけた。

こんなに大切なのに。

こんなに好きなのに」





何言ってるの?

傷つけたのはあたしのほう。

あたしはこの罪を、どう償っていけばいいのだろう。




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