fantasista
抜けたけど、何もなかった。
でもあの日、戸崎に会った、なんて舞さんには言えない。
あたしの元彼が戸崎だと知ったら、舞さんはひっくり返るだろう。
そんなあたしに、
「あー。やっぱり山形は残念な女だな」
先輩の大迫さんが言う。
そして、大迫さんと、
「失礼な!あたしは大迫さんと違って純粋なんです!!」
「純粋っつーか、ただの処女でしょ。
俺が相手してやろうか?」
「死んでも嫌です」
いつものやり取りをしていた。
何ら変わらない日常が戻ってきた。
あたしはこのまま、戸崎と遠ざかっていくのだと疑いなく思っていた。
会ってしまったのは偶然だ。
戸崎はただの、元彼だ。