fantasista
駅の改札の前に、戸崎は立っていた。
ジャケットにジーンズ姿で。
たいして着飾っていないのに、サマになっていてかっこよくて。
思わず赤面して俯くあたしに、
「おー、山形」
戸崎は何も感じていないかのように近付く。
あたしはそんな戸崎を顔を歪めて睨んだ。
「相変わらずつれない女だな。
怖ぇー」
「あんたがしつこいからでしょ?」
「俺、しつこいか?」
戸崎は一瞬戸惑い……
そして、おもむろにあたしの手を握った。
不意打ちだった。
完全に油断していた。
五年ぶりに触れたその手は固くて大きくて、そして優しくて。
身体を戦慄が走り、顔がぼっと赤くなる。
心臓が止まってしまいそうだった。