fantasista





愚かな自分に笑えた。

想像した通り、戸崎には戸崎の世界があるんだ。

もう、あたしたちの運命は交差しないんだ。





「帰る」



そう言って立ち上がったあたしに、



「俺が悪かったんだな」



ぽつりと戸崎が呟く。

そんな戸崎を思わず見てしまう。





奴は複雑な顔であたしを見上げていて。





「でも、これで気持ちは固まった」




低い声でぶっきらぼうに言う。





「俺はもう、我慢しねぇから!

お前が引くと思って、全部我慢していた。

でも、そんなに俺の気持ちが信じられねえっつーなら……」





いきなり戸崎はあたしの手を掴んだ。

掴まれた手を振り解こうとしても、強い力で引っ張られて離れない。

そして、例外なくその手にときめいてしまう。

こんな状態なのに。

きっとあたしたちは、修羅場の真っ只中だ。


< 50 / 244 >

この作品をシェア

pagetop