fantasista
そのまま、戸崎はぐっと手を引いた。
バランスを崩したあたしは、無様に戸崎の身体めがけて倒れこむ。
そんなあたしを、戸崎は羽交い締めにした。
まるでプロレス技のように。
……いや、すごく優しく抱きとめた。
ガサツな戸崎のくせに、こんなに優しく出来るのかというほど。
強固なその身体に抱きしめられ、爽やかなシトラス系の香りとともに、戸崎の懐かしい香りに包まれて、頭がぼーっとする。
何やってるんだ、あたし。
そう思うのに、身体は戸崎を求めて止まない。
抱きしめられただけなのに、身体が粉々になってしまいそうだった。
それだけ、あたしは戸崎しか見えていないことに気付いた。