fantasista
「相変わらずつれないなぁ。
俺とデート、嫌なのかよ」
足早に歩くあたしに、まとわりつくようにして戸崎が言う。
あれ?
こいつって、こんなにしつこい奴だっけ。
……いや、そんなことはない。
あの頃はもっとドライな関係だった。
まるで友達のように、お互い干渉し過ぎなかった。
喧嘩して、数日無視して、気付いたら仲直り。
そんな関係だった。
「山形のこと、待ってたんだぞ?」
しつこい戸崎を無視して歩く。
だけど……
急に手を握られて。
身体を電流が走って。
思わず歩くのを止めてしまう。
そして真っ赤な顔で俯いた。
あたしの手を握る戸崎の手は、記憶の中の彼の手よりも大きくて力強かった。
あたしはこんなにも全身でドキドキしているのに、きっと戸崎は何も思っていないんだろう。
いつもみたいに飄々と……
そう思って、盗み見るように真っ赤な顔を上げた。
戸崎はいつも通り涼しい顔をしていると思ったのだが……