fantasista






「……何だよ」




そう言って、そっぽを向く。

その顔は微かに紅潮していて、口元をきゅっと結んでいて。

戸崎ってこんな顔するんだとびっくりしてしまった。





その顔が何だか可愛くて、まじまじと見てしまう。

そして例外なく胸がきゅんきゅん音を立てた。





「お前……マジで煽ってんのか」




頰を染めたまま、戸崎は呟く。

訳が分からないあたしは、ぽかーんと戸崎を見る。

その、綺麗な顔を赤く染め、あたしから視線を逸らす戸崎を。




戸崎って、想像以上に純粋なのか?

一瞬そう思ってしまったが、そんなはずはない。

だって、あたしはあの地獄のような日を忘れないから。


< 59 / 244 >

この作品をシェア

pagetop