fantasista
「……何だよ」
そう言って、そっぽを向く。
その顔は微かに紅潮していて、口元をきゅっと結んでいて。
戸崎ってこんな顔するんだとびっくりしてしまった。
その顔が何だか可愛くて、まじまじと見てしまう。
そして例外なく胸がきゅんきゅん音を立てた。
「お前……マジで煽ってんのか」
頰を染めたまま、戸崎は呟く。
訳が分からないあたしは、ぽかーんと戸崎を見る。
その、綺麗な顔を赤く染め、あたしから視線を逸らす戸崎を。
戸崎って、想像以上に純粋なのか?
一瞬そう思ってしまったが、そんなはずはない。
だって、あたしはあの地獄のような日を忘れないから。