fantasista
空き缶は暗がりに飛び込み……
「痛ぇ!」
打撃音と男性の声が聞こえた。
あたしははっと我に返る。
あたしの蹴った空き缶が、誰かに当たったんだ。
怒りに任せてなんてことをしたんだろう。
馬鹿はあたしだよ。
「すっ……すみません!」
うずくまる男性に、思わず駆け寄る。
暗がりに座る彼はあたしに背を向けていて、どんな表情か分からない。
もしかして、流血していたりして……
「すみません!怪我はないですか?」
そう聞いたあたしに……
「俺の心が怪我してんだよ」
座ったまま彼は言う。
その声を聞いて……
胸がときめいた。
こんな男知らないのに、条件反射のように胸が鳴ったんだ。