fantasista
いつの間にかあたしたちは、薄暗い公園に来ていた。
こんな場所に立っているなんて、気付かなかった。
戸崎はゆっくりとあたしに手を伸ばし……
あたしの身体を抱き寄せる。
抵抗したいのに、金縛りに遭ったように身動きが取れない。
「やっと見つけたんだ。
絶対離さねぇ」
耳元で囁くその甘い声に鼓膜が刺激され、身体に触れるその強固な胸板に全身を焦がされ、立っているのがやっとだ。
ただ、おかしいほどに鳴り響く鼓動の音だけが、生きているということを物語っていた。
戸崎のくせに、どうしてこんなに甘いの?
やっぱり、ヘディングのし過ぎで脳みそが腐ったの?
戸崎がこんなに甘くて優しかったら、ますます深みに嵌ってしまう。
抜け出せなくなってしまう。
戸崎と深い関係になるのが、すごく怖いのに。