fantasista







いつの間にかあたしたちは、薄暗い公園に来ていた。

こんな場所に立っているなんて、気付かなかった。





戸崎はゆっくりとあたしに手を伸ばし……

あたしの身体を抱き寄せる。

抵抗したいのに、金縛りに遭ったように身動きが取れない。





「やっと見つけたんだ。

絶対離さねぇ」




耳元で囁くその甘い声に鼓膜が刺激され、身体に触れるその強固な胸板に全身を焦がされ、立っているのがやっとだ。

ただ、おかしいほどに鳴り響く鼓動の音だけが、生きているということを物語っていた。





戸崎のくせに、どうしてこんなに甘いの?

やっぱり、ヘディングのし過ぎで脳みそが腐ったの?

戸崎がこんなに甘くて優しかったら、ますます深みに嵌ってしまう。

抜け出せなくなってしまう。

戸崎と深い関係になるのが、すごく怖いのに。



< 61 / 244 >

この作品をシェア

pagetop