fantasista





「悪かった」




戸崎は静かに言って、シャツを羽織る。

そんな戸崎をやっぱり見ることが出来なくて。

あたしはまだ震えていた。





「……ごめん」




低くて落ち着いたその声が、耳に響く。

こんな状況なのに、胸がきゅんと音を立てる。




最低だ、あたし。

戸崎に何謝らせているんだろう。

こういう状況に陥った後、必ず相手は怒っていた。

だからきっと戸崎も……







「山形のこと、すげぇ大切なのに。

俺、なんてことしてんだろう」





……え?





「俺は山形を抱けなくてもいい。

山形がまた俺から離れていくのが怖いんだ」


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