fantasista




そう思うのに、



「昨日、ずっと山形を見てたんだ。

俺の隣で眠っているのが信じられなくて。

寝たらまた、お前は消えちまうような気がして」




戸崎はあたしに告げる。

その心地よく耳に響く、甘くて優しい声で。

あたしの胸が、例外なく甘く疼く。





「俺は幸せだ。

惚れまくった女と、また一緒にいられるなんて」






戸崎……なんでそんなことを言うの?

戸崎と過ごした一年半、愛情表現なんてほとんど無かったのに。

それなのに、五年ぶりに会った戸崎は甘すぎて。

甘い砂糖のようにあたしを溶かして飲み込んでいく。


< 91 / 244 >

この作品をシェア

pagetop