fantasista
そう思うのに、
「昨日、ずっと山形を見てたんだ。
俺の隣で眠っているのが信じられなくて。
寝たらまた、お前は消えちまうような気がして」
戸崎はあたしに告げる。
その心地よく耳に響く、甘くて優しい声で。
あたしの胸が、例外なく甘く疼く。
「俺は幸せだ。
惚れまくった女と、また一緒にいられるなんて」
戸崎……なんでそんなことを言うの?
戸崎と過ごした一年半、愛情表現なんてほとんど無かったのに。
それなのに、五年ぶりに会った戸崎は甘すぎて。
甘い砂糖のようにあたしを溶かして飲み込んでいく。