fantasista
今の戸崎は甘ったるくて苦手だ。
あたしまで、変な気分になってしまうから。
戸崎に甘えるなんて恥ずかしいのに、その優しさに身を委ねてしまうんだ。
だけど……
「どこにも行かないから」
あたしは戸崎に告げる。
これ以上、戸崎を心配させてはいけない。
「あたしは、あんたが戻ってくるのを待ってるから」
戸崎は嬉しそうにあたしを見た。
そして、その大きい手であたしの頭を優しく撫でる。
そんな戸崎に身を寄せた。
悔しいけど、あたしはもう逃げられない。
五年前よりも、もっとずっと戸崎が好きだ。
「明日の試合、頑張ってね」
「任せとけ」
戸崎は自信満々にあたしに告げ、去っていった。
あたしはそんな戸崎の背中を見て、必死に抱きつきたい気持ちを我慢した。