好きだから……
「自転車通学なの?」
「はい。地元なんで」
「だから、この高校……」
「え?」
「あなたほどの子がどうして、高校に通っているのかわからなくて。地元なら、なんとなく~っていう流れでぴったりでしょ。私みたいに、どうしてもココじゃなきゃってわけじゃない。だから成績が悪くても、平気なのよ。私だったら、万年最下位なんて生きていけないわ」
「あ……はあ」

 もしかして、あたしは嫌味を言われてるのかな?
 どうしてだろう。
 青田さんとは大して仲良くないのに。

 2-Aといったら、頭脳明晰集団のクラスで。
 あたしのいる2-Gは馬鹿の集団。

 接点なんて無いのに。

「みどり、いい加減にしろ。絢音に八つ当たりすんな。中間試験で3位だったぐらいで、機嫌悪くなんてんじゃねえよ」
 青田さんの肩に、ぽんっと大きな手が乗る。
 肩にある手を頼りに視線をあげると、カナちゃんが立っていた。

「え? カナちゃん、青田さんと知り合い?」
「ああ、幼馴染。ま、腐れ縁」
「要はこの子にやさしすぎ!! さっきのチョコマフィンだって不味くて気持ち悪くなってるし。成績悪いくせに、恥ずかしげもなく……」
「みどり! 言い過ぎだ。絢音とみどりじゃ、本質が違うだろ。立ってる土俵も違う」

 青田さんが、カナちゃんの腕を払うと、キッとあたしを睨み付けてきた。

「圭一も圭一よ。この子の話になった途端に、私を無視したのよ。返事もしないで、無表情になって」
「あ……それは、あたしがバカすぎるからじゃ……」
「そうかもね。最下位の人間になんて興味がないのね。でも、無視したことは事実。なんの努力もしてないただのバカには、みんな笑顔で優しくて。必死にもがき苦しんでる私は、誰からも優しくされないなんて、世の中は不条理ね」

 ぷいっと青田さんが顔を背けて、方向転換すると道路の反対側へとわたっていった。
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