好きだから……
馬鹿だけど。不器用だけど。
 あたしは圭ちゃんと離れたくないっ。

 圭ちゃんが突然、動きを止めた。
 じっとあたしの顔を見てから、「ふう」と小さくため息をついた。

「無理なんだろ。なんで何も言わねえんだよ」
 圭ちゃんが怖い顔をしてる。

「だ、大丈夫、だから。今日は……平気だから」
 あたしは圭ちゃんの腕をぎゅっとつかんだ。
 離れていこうとする圭ちゃんを、必死に引き留める。

「ほんとに、大丈夫だから。お願い、圭ちゃん」
 
 圭ちゃんが、あたしの腕を払うと、床に落ちているあたしのキャミを拾って、あたしの顔に投げた。

「シャワー浴びてくる」とベッドから出た圭ちゃんが、振り返らずにユニットバスへと向かった。

 圭ちゃん、青田さんが圭ちゃんを好きなんだって。
 圭ちゃんは、青田さんをどう思ってる?

 青田さんだったら、圭ちゃんを受け入れられるかもしれない……。
 嫌だけど、圭ちゃんにとったらそれがいいのかもしれない。

 圭ちゃん、好きだよ。
 あたしは、圭ちゃんが好きなんだよ。

 どうしてあたしは、圭ちゃんの望むように出来ないんだろう。
 どうしてあたしは、バカなんだろう。
 バカじゃなかったら、もっと圭ちゃんの支えになれるかもしれないのに。


「弁護士になりたんだろ。今回の試験結果を気にしてどうなる」
 圭ちゃんの声が遠くから聞こえてきて、あたしは瞼を持ち上げた。


 あ……圭ちゃんがシャワーを浴びてる間に寝ちゃってた。
 いけない! 圭ちゃんがシャワーを浴びている間に帰るのが、ルールなのに。

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