好きだから……
 あたしは制服の裾をギュッと握りしめると、意を決して顔をあげた。

「圭ちゃん」と呼ぶと、玄関で足に靴を入れていた圭ちゃんが「ん?」と振り返った。

「あたし、圭ちゃんになら何されても大丈夫だから! ……だから、その……えっと」
 今の関係を壊さないで……と言いたくて、言えなかった。

 言いたいのに。言葉が喉の奥につまって、出てこない。

「……ちっ」と圭ちゃんが舌打ちをした。

 え!? 怒らせた?
 あたしは圭ちゃんを怒らせちゃったのかな?

 履きかけの靴を脱いで、圭ちゃんがあたしの前に立った。

 圭ちゃんがあたしの頭をぐいっと押すと、圭ちゃんの胸に額がコツンとあたった。

「絢には、かなわねえな。ある意味、青田に勝ってる」
「え? 青田さんに?? なんで? 3バカトリオの一人だよ? 青田さんは頭がいいし、スタイルもいいし、顔もキレイで……」
「そういうところ」
「え? どういうところ?」

 圭ちゃんの言っている意味が、全然わからないよ。理解が……できないんだけど。
 あたしが、青田さんに勝ってるわけないのに。

「俺が3バカトリオから、抜け出させてやる」
「圭ちゃん?」
「河原がムカつくから。期末に向け、勉強をみてやるから」

 ポンポンとあたしの頭を撫でた圭ちゃんが、微笑んだ。

 あ、中学生のころの圭ちゃんみたいな笑顔だ。
 あたしの心の奥がほっこりとあたたかくなった。

 ずっと見たかった圭ちゃんの笑顔。
 久々に見れて、幸せだよ。

 あれ? でもなんで、京ちゃんに圭ちゃんがムカついてるんだろ?


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