好きだから……
「俺も。河原先生にムカついてるんで。お互い様ってことで」
「最近の若造は。教師を何だと思ってんだ」と河原が愚痴をこぼす。
「では、失礼します」
 俺は河原に、軽く頭をさげてから職員室を出ていった。

「あら、美島君? ごめんなさいね、職員室にいま戻ろうと思って」と職員室から廊下に出てきた俺に、東山が声をかけてきた。

 スッと俺の腕に手をのせてくる。

 俺、こういうの、嫌いなんだよ。
 オンナを前面に出してくるヤツ。

「用はもう済んだので」と俺は、東山の腕を払う。

「私以外の教師に?」
「河原先生に、ちょっと」
「なんで、2-Gの教師に?」と東山の顔色がかわる。

 この人も、青田と一緒だな。
 人を優劣で決めて、品定めをする。

「先生、誤解してません? 河原先生は2-Gの担任ですけど、T大を主席で卒業してるんですよ。東山先生、河原先生を馬鹿扱いしてますけど、学業の成績の面でいえば、東山先生のほうが下だと思います」
 なんで、俺が河原のフォローなんかしてんだ。

 絢を、大馬鹿扱いしているヤツなのに。

 俺は東山に背を向けると、廊下を速足で歩き始めた。
 絢には、青田の告白を伝えたが。
 東山からも告白されたことは黙っておこう。


―圭一side-終わり
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