好きだから……
「へいへい。俺が悪かったよ。絢音はデキる子です~、ハイハイ」
 京ちゃんがあたしの頭を撫でながら、面倒くさそうに言葉を吐いた。

 圭ちゃんが目を細めると、一歩前に出て、京ちゃんの手首をつかんで捻った。

「いっ……」と京ちゃんが痛みで顔を歪めた。

「気安く触らないでいただけます? 『俺の』、なんで」

「はあ!?」
「えっ?」
 カナちゃんとちぃちゃんが、雄たけびをあげる。

 あたしは驚いて、くるっと振り返って圭ちゃんを見つめた。

「だろ?」と圭ちゃんが、あたしに聞いてくる。
「あ、えっと……」
 圭ちゃんがニヤッと笑うと、「じゃあな」と廊下を歩き出した。

「なんだ、あいつ?」と京ちゃんが、手首をなでながらつぶやく。

「絢ちゃん、これはどういうこと!? 『俺の』ってなに!? ねえねえ、絢ちゃん!」と、ちぃちゃんがあたしの肩を掴んで、揺らしてきた。

 圭ちゃん?
 どうしちゃったの?
 チョコマフィンを食べたせいで、頭のシナプスが何本か壊れちゃったのかな?

「絢の成績をあげて、自分も不動の1位って……まじ、むかつくな。あいつ。さらに絢を、『俺の』扱いかよ。どんだけ上から野郎なんだ?」
 カナちゃんが、小さくなっていく「T3」の背中を見送りながら、不満の声をもらした。

「どうしよ。チョコマフィン食べたせいで、美島君の脳みそをおかしくしちゃったかも」
「はあ!? あのくそ不味いのを食わせたのか?」とカナちゃん。
「勝手に食べられちゃった……ていうか」

「餌付けかよ!」と京ちゃんが、すかさず突っ込みをいれた。

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