好きだから……
「まさか、みどりが動画を見てるとは思わなかった」
「『カナカナ』しか見てない」
「え?」
「勉強の合間の休憩の時とか。寝る前にとか。要に似てるなあって思ったのがきっかけ。夜中に要の声が聞きたくなった時に、動画を見ると安心できたから」
「……俺、すげー愛の告白をうけてるみたいなきぶんなんだけど」
「え? あ……」

「『あ』じゃねえし」
 俺はクスクスと笑うと、みどりが「告白じゃないし」と小さい声で呟いた。






 ゴンっという音と衝撃で、俺は目を覚ました。

「あ、要、ごめん。蹴っちゃった」とみどりが、朝食の卵焼きを並べながら、口を開く。

「こらぁ。いい加減に俺がここで寝てるのに、慣れろや。毎朝、人の頭を蹴るな」
「キッチンとダイニングのその狭いところで寝てるからでしょ? ねえ、昨日は何時に寝たの?」
「4時に作業を終わらせて、シャワー浴びて寝たから、四時半くらいじゃねえの? 外、明るかったし」

 俺たちの関係が少し変わった。
 みどりが毎朝、塾に行く前に家に寄って朝食を作ってくれるようになった。

 昼、夜のご飯は無理だから、千里にお願いしてほしいと、みどりが言ってた。
 大学が決まって、落ち着いたら家事全般はやってくれるとも話してた。

 大丈夫なのかよ。
 受験もそうだけど、大学にいってからだって忙しいだろうに。

 俺は身体を起こすと、ぼりぼりと頭を掻きながら大きなあくびをした。

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