好きだから……
「すごい、寝ぐせ」とみどりがクスクスと笑って俺の髪をツンと引っ張った。

「そういえば……圭一から誘われたんだけど」
「はあ?」
 美島が? いまさら、みどりを誘うってなんだよ。

「プール、行かないか?って」
「美島と?」
「違うちがう。要を誘って来いって。圭一は土屋さんと大牧さんと誘う言ってたよ」

 チュッとみどりから軽いキスをされた。
 不意打ちだ。
 このタイミングでされたら、嫌だって言えなくなるだろ。

「たく。しょうがねえな」
「あと、要には河原も誘うように言っとけって」
「はああ!? なんで俺が」
「大牧さんのため、だって言ってた」
「ああ?」
「絶対嫌がるだろうから、短めのスカートで要に太ももを見せればオッケもらえるとも」

 みどりはそう言って、俺の上に跨って、短いスカートの裾をあげて、太ももを見せつける。

「ふざけっ」と俺は、みどりから視線をそらし、「あいつの思惑通りになるかっての」と呟く。

「だめ?」
「今のこの状況は、おいしい。けど、裏で美島がちらつくのがむかつく。河原は誘っとくとあいつに伝えておけ。むかつくけどな!」

 ほんとに、むかつく。

「ねえ、要。遅刻してもいいから」
「駄目だ! 遅刻して、家に連絡いってみろ。嫌な思いをするのは、みどりだぞ」

 みどりの額をぐいっと押し返すと、俺は布団から出た。
……ったく。美島め。
 変な知識を、みどりに植え付けてんじゃねえっての。

 てか。あいつら、塾でなんつう話をしてんだよ。

< 38 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop