好きだから……
 ピンポーンと何度も、激しく鳴りまくる。
 みどりも美香も塾に行った今、誰がこの家に用があるというのか。

 千里は呼び出さなきゃ、こねえし。
 宅配便だってこんな激しく鳴らすヤツいねえし。

 俺はのそのそと、玄関のドアを開けた。
「なんか忘れもんでもしたのかよ?」と言いながらドアを開けると、みどりとよく似た女性が怖い顔で立っていた。

「あ……」と俺は小さく声をあげて、心の中で『やべ』と呟く。

「引っ越す際に言いましたよね? 今後一切、みどりとは関わらないで、と」
 睨みあげる顔が、ちょっと前のみどりにそっくりだ。

 学年一位にこだわって必死にもがいてた頃のみどりの表情に、よく似ている。

「そう……ですね」と歯切れの悪い返事をした。
 みどりと関わりまくってるせいか、後ろめたい想いしか、湧き起らない。

『両親を亡くした貴方は、みどりには悪影響しか与えないわ。もう今後一切、みどりにかかわらないで頂戴。あの子はもっともっと上に行く人間なの。貴方のような人間と関わったら、レベルがさがるのよ』

 両親が死んで、ここに引っ越してくる際に、みどりの母親に言われたを思い出す。

 あの時は、両親を亡くした俺に向かってなんてことを言ってくんだよ、て思った。
 時間が過ぎて、高校で3バカトリオを呼ばれるようになってから、「ああ、そういうことか」と納得した。

 それなりに距離を開けてるつもりだった。幼馴染として、接するくらいで留めておけば、みどりのお母さんには迷惑はかからないだろうって。

 思い切り裏切ってしまったのは、みどりが美島に告白して、振られてからだ。
 関係がガラリと変わった……が、表向きの関係をみどりが変えようとしてなかったら、平気だと思っていた……が、

 平気じゃないんだな、今は。
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