好きだから……
「見た通り。みどりのお母さんから、突きつけられた」
「なんで!?」
「理由、みどりのほうが良く知ってるんじゃないの?」
「……あ。お母さんから、聞いちゃった? 志望校変えたこと……」
「聞いた。俺と距離を置けば、みどりが弁護士志望の頃に戻れるって。俺はそうは思わないから、誓約書も小切手も、受け取れないって言った……けど、置いて帰っていったよ。俺の意見云々より、強制的に書かせたいんだろ」

 みどりが眉をへの字にして、悲しげな表情になった。

「要、怒ってる?」
「なんに対して?」
「私が、志望校変えたの言わなかったから……」
「話してほしかった、とは思う。けど怒るほどじゃねえだろ。俺が大学受験するんじゃねえし。これはみどりの問題。それに金出すのも、みどりの親だしな。みどりと親の間で、折り合いがついてねえのに、俺に話すのは筋違いだと思うから」
「……じゃ、なんで怖い顔してるの?」

 俺は、頬の筋肉のこわばりに気づいて、ふっと笑って緩めた。

「やり方が汚ねえだろ。俺たちには親はもういねえから、生活に制限がかかっちまう。美香にだっていろいろ我慢させてる部分がある。行きたい高校に行かせられないかもしれない。金の関係で。それを知ってて、俺に大金をチラつかせたんだ。金か、みどりか……どちらかを選べって」
「要……」
「答えは決まってる。美香には、このまま我慢してもらうことになるけどな」

 みどりがホッとした表情をして、そのまま座り込んだ。
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