好きだから……
「テントに戻ってろって言っただろ」と、今度は先生にポカッと頭を叩かれた。
「シャツも着てねえし」と、さらに付け加えられた。

「ああ、あいつらも助けに来てたのか」
 先生が、美島君と要ちゃんの背中をとらえると呟いた。

「『大牧は胸がデカいだけだろ』だって。美島君に言われちゃった。美島君に言われると、グサッとくるんだよね。言葉にはしてないけど、『バカで胸だけオンナ』って言われてるように感じちゃって。要ちゃんもフォローしてないところを見ると、『ああ、そうなのかな』って」

 胸の奥がツキンと痛む。
 事実なんだけどね。
 頭のいい美島君だからこそ、心に突き刺さるんだね。
 仲の良い要ちゃんだからこそ、フォローしてもらえなかったときに、悲しくなるんだよね。

「俺からいわせりゃ、美島もただの本能ダダ漏れ野郎だし、要は女の尻にひかれたМ男だろ。それに、あいつらの最大の弱点は料理ができない!」
「先生……」
「さっさとシャツを着ろ! 下着みたいな水着だから、ナンパされんだろうが」

 はい、と返事をすると、わたしは先生のシャツを頭からかぶった。

 あ……、先生の匂いがする。
 幸せ。先生のシャツを着られるなんて。








テントに戻る途中、「京平?」と女性の声がした。
先生は、ぴくっと反応すると、声がしたほうに顔を向けた。

「あ、やっぱり。生徒と一緒にプールに行くって話してたから。ここじゃないかと思って」
「東山先生」と先生が呟くと、軽く挨拶をした。

 真っ赤なビキニ姿の美紅先生。
 大人の色っぽさが半端なく醸し出されている。
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