好きだから……
 わたしみたいにとってつけたような着慣れないビキニ姿と、大人の色気を前面に出して着慣れしたビキニ姿の美紅先生。

 敗北感が心を支配し、わたしは息苦しくなった。

「わざわざ教師にテントを買わせて、自分たちは楽してプールに行こうだなんて。バカでも知恵はあるのね」と、美紅先生が先生の腕に絡まりながら言葉を投げる。

 まるで刃だ。
 心を抉られる。

「千里の案じゃないし、千里は誘われたクチなので」と先生がフォローしてくれた。

「同罪よ。京平が来るのを知ってたんだろうし。せっかくの休日を、つぶしてるんだから」

 痛い。美紅先生の言葉は、すごく痛い。

 先生の大切な休日を、潰してしまったの事実だから。
 きっと何か、予定があったかもしれないのに。

 テントまで買わせて、プールに付き合ってもらってる。

「同罪って、なんの罪だよ。千里はなんも知らねえよ。俺らだけでプールに来ると思ってたんだから。京ちゃんを誘ったのは俺。しかも、誘えって命令したのは、他でもないあんたの生徒の美島だし」
 流れるプールから戻ってきた要ちゃんが、低い声で会話に割って入ってきた。

「美島君が?」と美紅先生が驚きの声をあげる。
 そんなことあるはずがない、と言わんばかりの表情だ。

< 53 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop