好きだから……
「陸上部の顧問であり、松平たちの担任でもあるので、危機管理の一つとして先生に引率をお願いしただけです。無理やりというわけでもないですから、東山先生が俺たちを責めるにたる理由はないと思いますが?」
 絢ちゃんと一緒に戻ってきた美島君が、要ちゃんより一歩前にでると、堂々とした口調で話した。

「それとも俺らの担任として、東山先生にも一声かけたほうがよかったですか?」
「『俺ら』?」と美紅先生が、眉間を寄せた。

「こんにちは、東山先生」とみどりさんが、要ちゃんのうしろから声をかけた。

「青田さん!? こんなところで遊んでていいの? 9月の模試は?」
「あ、勉強はしてますよ。たまには息抜きも、って要と圭一に誘われたので」
「だって、あなた……1位にどうしてもなりたいって……。遊んでる時間なんてないはず」

「遊ばず、勉強に時間を費やせば、成績があがるわけじゃねえし」と先生が横やりをいれた。
「あきれた、京平までそんなことを……」

 美紅先生が、掴んでいる先生の腕をぐいっと引っ張った。

 いいなあ、先生に堂々とくっつけて。

 美紅先生の胸の谷間に収まっている先生の二の腕をついつい見つめてしまう。

「東山先生、お友達があちらで待っているようですけど」
 美島君の顎がくいっと、左方向に向く。

 わたしも美島君の顎の動きにあわせて、視線が動く。
 女性3人がこっちをじっと見ていた。

「そうね。待たせちゃ悪いわね。くれぐれも教師の手を煩わせないように。とくにそこの3バカさんたち」と美紅先生が、わたしたちを睨むとその場を離れていった。

「お前の失態だな、松平」と美島君が、要ちゃんの脇腹に、肘を入れた。

「あ~、聞かれていたとは」
 要ちゃんが額に手をあてた。

「職員室で話すからだろ」と先生が突っ込みを入れる。
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