溺愛CEOといきなり新婚生活!?
彼の部屋はドアが半開になっている。
「だから、頼むよ」
誰と何を話しているのか聞くつもりはないけれど、漏れ聞こえた永井さんの声に足音を忍ばせてしまう。
「今度こそちゃんとしたいんだ。だから……七瀬、会ってほしい」
――七瀬さんっていうんだ。永井さんが上手く愛せなかった人がいると言っていたけれど、その人と話しているんじゃないかって、そんな気がした。
私が雅哉さんと順調だから、諦めてくれたのだろうか。
それとも、最初からサンプリングマリッジが終わったら、何もなかったそれまでと変わらず、赤の他人に戻るつもりだったのかもしれない。
永井さんの想いを疑ったりはしない。
私じゃなくて、他の素敵な誰かを想ってくれたらいいと、そう思う。
永井さんが七瀬さんを選ぶなら、それがいい。