溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 彼の部屋はドアが半開になっている。


「だから、頼むよ」

 誰と何を話しているのか聞くつもりはないけれど、漏れ聞こえた永井さんの声に足音を忍ばせてしまう。


「今度こそちゃんとしたいんだ。だから……七瀬、会ってほしい」

 ――七瀬さんっていうんだ。永井さんが上手く愛せなかった人がいると言っていたけれど、その人と話しているんじゃないかって、そんな気がした。


 私が雅哉さんと順調だから、諦めてくれたのだろうか。
 それとも、最初からサンプリングマリッジが終わったら、何もなかったそれまでと変わらず、赤の他人に戻るつもりだったのかもしれない。

 永井さんの想いを疑ったりはしない。
 私じゃなくて、他の素敵な誰かを想ってくれたらいいと、そう思う。

 永井さんが七瀬さんを選ぶなら、それがいい。


< 106 / 378 >

この作品をシェア

pagetop