溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「ごめんなさい。この前、お夕飯をどうするか話したとき、廊下にいたから聞こえてしまって……」

 そう、とにこやかに返す彼と、気まずくて目が合わせられない。
 聞くつもりはなかったけれど、九条さんに七瀬さんの存在を確認してしまった後だ。勝手な想像とはいえ、本人の口からその名を聞くと、真実味を帯びてくる。


「花澄に隠すつもりはないよ。そんなに気を落とさなくてもいい」
「……過去を勝手に知られて、嫌じゃないですか?」
「過去なんて、誰だってあるだろ? 一緒に過ごしていれば、いつかは何かしらの形で知るんだから、いちいち目くじら立てていられないよ。それに、七瀬とはそのうち会うことになるかもしれないしね」

 もし、雅哉さんだったらきっと怒るだろう。
 勝手を嫌う人だから、彼が望まないタイミングやきっかけで知られたら、見たことのない激高した顔を知ることになるのかも……。


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